前回のイェレヴァン編に引きつづき、イェレヴァン郊外に位置する「ズヴァルトノツ遺跡」「エチミアジン(ヴァガルシャパト)の教会たち」について書いていきます。
アルメニアには数多くの美しき教会や遺跡があります。
その中でも世界遺産のズヴァルトノツ、そしてアルメニア正教会の総本山が位置するエチミアジンは必見でしょう。
ズヴァルトノツ遺跡はアルメニアの最大の国際空港・ズヴァルトノツ空港の近郊にあり、国家のシンボル的存在であり、エチミアジンはアルメニアの正教会についてたっぷり触れることのできる場所となっています。
なお、エチミアジン(アルメニア語:Էջմիածին, Ejmiatsin、ロシア語:Эчмиадзин, Echmiadzin)は総本山・エチミアジン教会から取られた名前であり、街の正式名称はՎաղարշապատ=Vagarshapat、ヴァガルシャパトとなっています。
ただ、マルシュルートカ含め交通機関のアクセスは基本エチミアジンという呼称で通っており、ヴァガルシャパトはほとんど使いません。
エジミアツィンではなくエチミアジンという呼称が一般的なのは、ロシア語から取っているからでしょうか?
今回のBGM↓
1.イェレヴァンより移動
イェレヴァン郊外のキリキアアフトヴァグザル(バス駅)からエチミアジンへはマルシュルートカが走っています。
マルシュルートカに関してですが、フロントガラスに貼られた行先のパネルがアルメニア語で書かれていることばかりです。路線の番号で確認するか、アルメニア文字を読めるようになるか、パネルがラテン文字で書かれていることを期待してください。バスステーションには結構待ってるドライバーも居るので彼らに質問するのも有効。
今回はズヴァルトノツへ先に寄るため、エチミアジン行きのバスに乗り途中下車します。
早速バス停で降りて向かいます・・・が、入口がよくわからず迷うことに。
遺跡回りはアルメニアの郊外らしき風景と言えばよいのでしょうか。これはこれでのどかで良い雰囲気です。家畜と犬も居ます。
マップをよく見るとどうやらバス停のある幹線道路側にちゃんと入口があるみたいです。
しばらく歩き正門へ到着、でも受付も開いていません・・・本日の観光失敗?????????????
ただ、カウンターを覗いてみると門から人が出て来て、「観光?」と聞いてくれました。外国人向けの料金を支払い、本日の顧客第一号として入構することに。良かった!
3. 世界遺産・ズヴァルトノツ遺跡
正門を潜り抜けると、アララト山をバックに通路の先に遺跡が見えます。
「ズヴァルトノツ古代遺跡」。アルメニアが誇る中世の教会を発掘・一部復元した世界遺産です。
ズヴァルトノツは643年に建築を開始し、652年に正式に教会として完成しました。
この教会は10世紀まで存続していましたが倒壊し、それ以降復元作業まで廃墟だったそうです。倒壊した要因は地震やアラブ人による破壊活動などが提唱されていますが、地震が有力と言われています。
遺跡の支柱部分を見るとよくわかるのですが、「発掘した部分+足りない新たに切り出して加工した部分」の複合体によって遺跡として整備している模様。日本では石造の遺跡は非常に少ないため、中々興味深い復元方法です。
近くには復元には使われなかったと思われる発掘された建材も。
教会本体の近くにはバスルームや円柱の並ぶ間、カトリコスの居住区など、教会に付随する施設の遺跡が眠っています。
そういえば、この一角におそらく施設の一部であると思われる石材があるのですが・・・
!?!?!??!??!??!?!?!?!?!?!?!?絶対落下して何個か割れたりしてると思うんですが・・・。しっかりしてくれ・・・。
そういえば、この遺跡はアルメニアの空の玄関・ズヴァルトノツ空港とかなり近いです。そのため、遺跡と航空機のツーショットを撮影することが可能。古代と現代の交差点という雰囲気で中々面白いです。カメラに自信ある人は狙ってみてはいかがでしょうか。
3. エチミアジン教会巡り ショガカト教会
正門付近でタクシーをつかまえ、エチミアジン中心街へ。エチミアジンは日本でいうお伊勢的な場所で、アルメニア正教会で最も権威のある教会であるエチミアジン大聖堂、そしてアルメニア正教会の権威であるカトリコスの居住区があります。
アルメニアへはディオクレティアヌスの迫害から女子修道院長のガヤネ、フリプシメと35人の修道女が逃れました。しかし、当時の国王ティリダテス三世の求婚を拒否したガヤネとフリプシメ、そして逃げ隠れた残りの修道女たちは処刑されてしまいました。
(後日訪れたジョージア・ムツヘタに強く関連するジョージア正教の聖人ニノはその中の生き残りだという伝承もあるようです。)
その後、弾圧によって拷問されようがホルヴィラップ教会へ幽閉されようが信仰心を捨てなかった啓蒙者グレゴリウスにティリダテス三世が出会うことでキリスト教への改宗を決めることになり、アルメニア王国は世界で最も古いキリスト教を国教に定めた国家になります。(一説には301年)(という認識で合ってるよね?)
エチミアジン大聖堂はその後グレゴリウスの手によって建てられたといわれています。
また、街にはエチミアジン大聖堂以外にも修道女に関するいくつかの美しい教会が建っています。
まずはその舞台の一つであるショガカト教会へ。
ここは35人の修道女が隠れ住み、そして処刑された場所とされています。
教会内部にもその時の様子を示したイコンがありました。
美しい建築です。正教会の建物には入ったことはないのですが、自分としても宗教は興味の対象のため、ドレスコードを守って見学。内部でもできるだけ端で静かにしてました。
3. 聖フリプシメ教会
次の目的地はショガカト教会近くの聖フリプシメ教会。7世紀に建設され、殉教したフリプシメの遺骨が納められています。
教会の外側にはなにやら塀?のようなものも。
帰りに兄ちゃんからすっごく控えめに「彫刻作ったんだけど買わない?」と言われたんで、買っていきました。
4. 市内移動、小休止
ショガカト教会、聖フリプシメ教会はエチミアジンの郊外にありますので、歩いてエチミアジン大聖堂のある中心街へ向かいます。
街並み自体はソ連っぽいアパートとかソ連っぽい石碑とかがあるような地方都市。
「消えない炎」系の第二次大戦記念モニュメントもあります。
この途中で政府系の建物を撮影してしまうという失態をやらかし、地元の少年に「What are you doing????」という警察ごっこを喰らうことに(消すわ!と言ったらいいから!wwwと返された)
市内にはアルツァフの旗や博物館など、例にもれずこの国の情勢を感じるものが多く置いてありました。
郊外の教会から中心街へは歩いていればすぐに着きます。
朝からの移動で腹が減ったなあ、ということでアルメニア名物のシャウルマを食べに屋台を探しました。
エチミアジン大聖堂の敷地近くに出店を見つけたので、そこで食べることに。店員さんが親切で面白い方でした。
いざ注文してみると、それが結構デカいです。これ一本食べたらもう夜まで何も要りません。さっぱりしたレモネードと共に頂きました。大変美味!
外のテラス席なんですが、タグ付きの犬がクゥーン鳴いて執拗に迫ってきました。やらねえぞ!
何しれっとした顔で圧かけてんだよ。絶対にやらんからな。
この後足裏で服めっちゃ汚されました
5. エチミアジン大聖堂と関連建築物
いよいよ大聖堂へ向かいます。
エチミアジン大聖堂の近辺には沢山のハチュカルやおそらく聖書に関連する石碑、教会が建っています。
聖大天使教会。2011年に建設が完了した、円筒型の建築物です。
ハチュカルも沢山あります。
ティリダテス三世及び啓蒙者グレゴリウスの門。
こちらは中心街からの入り口ではありませんが、荘厳な建築のため近くで鑑賞を推奨。
聖ヴァルダン・聖ホフハネス礼拝洗礼堂。内部の見学もできます。
近くには沢山ハチュカルが置いてるので、それらを見るのも面白いです。
この教会の近くに今回の目玉、エチミアジン大聖堂が位置します。
広場の中心に位置するため、見れば一目でわかると思います。
残念ながら工事中で内部の見学はできず、外装も一部再建中だった模様。それでも、十分すぎるぐらい美しいです。彫刻がとにかく複雑な幾何学模様で、ほれぼれします。
さて、ひとまず目玉である大聖堂を見たので宝物庫を見ようと思ったのですが、昼休憩だったため見ることができず。
聖フリプシメ教会、ショガカト教会に次ぐ修道女にちなんだ教会、聖ガヤネ教会へ向かいます。
6. 聖ガヤネ教会
聖ガヤネ教会はガヤネの殉教した場所に位置します。エチミアジン大聖堂の敷地から少し歩いた場所にありますが、そんなに遠くないので徒歩で大丈夫です。
茶色の建造物に細やかな装飾を施した門が設けられています。
こちらは内部の見学も可能です。
とても美しいです。教会自体は630年に建造されました。エントランス付近の風化した彫刻も、もしかするとその当時からあるのかもしれません。
あと、個人的にはここで見かけた茶色いハチュカルも見どころでした。
見てくださいこの圧倒的彫刻!!!
これを人が掘ってると思うと中々感激します。
与太話ですが、みなさんは「ガヤネ(ガヤネー)」という言葉にはきっと接したことがあるはず。
ガヤネーはアルメニア語でԳայանե=Gayaneと書きますが、日本ではこれを「ガイーヌ」と呼ぶ、あるバレエが有名・・・ピンときましたか?
ガイーヌといえばアルメニア人の音楽家、アラム・ハチャトゥリャンが編曲したバレエ舞曲。誰もが聞いたことがあるであろう剣の舞は、このガイーヌに含まれる楽曲です。(聞けば絶対知ってる!)
(個人的には「レズギンカ」も推せます。)
ちなみに、ガヤネーを作曲したハチャトゥリャンはソヴィエト時代のアルメニア国歌の作曲も行っています。
ソ連の国歌は有名ですが、こちらもかなり荘厳な曲調でかっこいです。
7. エチミアジン宝物庫
聖ガヤネ教会を見学し、宝物庫の開館時間に。
エチミアジン大聖堂のある広場まで戻り、見学することに。
ここで重要なことが一つ。宝物庫はカトリコスの居住区の一区画にあり、非常に神聖な場所であるが故に居住区は一切撮影禁止です。学芸員が宝物庫にたどり着くまでぴったりついて案内しますし、学芸員が来るまでは待機しなければなりません。博物館でこういう体験をすることになるとは・・・緊張感が。
ただし、宝物庫内部では撮影が可能のようです。
自分はここにロンギヌスの槍が展示されていると聞いていたのですが、今回見ることはできませんでした。他の人の見学記録を見るあたり、自分が行ったときは閉鎖されているフロアがあったようです。残念・・・。
もしかしたらフロアや宝物を修復中であるか、どこかへ貸し出しているのかもしれません。
今回自分が見たものを少しだけ共有します。
拷問に屈しない聖グレゴリウスの絵が描かれたカーペット
聖ガヤネのイコン
エチミアジン大聖堂と太陽を模したミニチュア
宝物の数々。
8. まとめ
今回はアルメニア正教会の重要拠点・エチミアジンについて紹介しました。
ちなみにこの後はイェレヴァン編で紹介したアルメニア歴史博物館に訪れました。
次回はゲガルド修道院・ガルニ神殿編です。